世界のために全てを捧げた君の、それは最後の願いだった
「ゼロレクイエム、悪逆皇帝を演じるのは僕であるべきだ!」
Cの世界で、ルルーシュとスザクが手を組んだ。それは、仲直りしたなどという生易しいものではなく、文字通り、手を組んだ、その表現がぴったりだった。
ミレイさんとルルーシュにアッシュフォード学園で拾われてたとき、僕は自身の名前以外のすべての記憶を失っていた。記憶とともに、およそ人格、とよべるものさえ、無くしていた。
生徒会のみんなのおかげで、出会った当初は無機質だといわれていた笑みもちゃんと笑えるようになった。楽しい、嬉しい、悲しい、寂しい、そんな感情も、覚えられるようになった。
様々な出来事をへて、記憶を取り戻した僕は、紆余曲折の果てにルルーシュと共に歩む道を選択した。ルルーシュと思いを交わし、通じあい、笑みを重ねて、彼の隣にたつことを決めた。
ルルーシュは、僕の、僕にとっての、大切な人
そんな僕が、ゼロレクイエム―――ルルーシュが死ぬ計画に賛同なんて出来るはずが無かったのだ。
僕の言葉に、ルルーシュが悲しそうに目を細めて笑う。
僕の言葉を予想していた、とでもいうように。
それはそうだろう。ルルーシュと共に居た時間は決して長くなかったけれど、短かったかもしれないけれど、密度は濃かったから。
それに、僕ら二人は色々なところが似ている。媒体は違えどギアスの力、生い立ち、思考。似ているからこそ、惹かれあった。似ているからこそ、相手の言動が、予測できる。
だから、ルルーシュが僕の言葉にうなずかないことなど僕だってわかっていた。けれど僕は、言葉を止める訳にはいかない。
「悪逆皇帝は、僕がなるべきだ!僕は狂王と呼ばれた存在。悪逆皇帝には、僕こそがふさわしい!」
僕の過去の一端。それは、嘘ではないから。
僕の言葉は血を吐くような叫びだった。少なくとも、僕の耳にはそう届いた。
右手を胸に手を当てて左手を広げて、訴える。必死に、懸命に、ひたすらに。
ルルーシュは、予測済みだっただろう僕の言葉に心を動かされることは無いだろうけど。それでも、僕は。
「悪逆皇帝は、王座のために兄弟を殺し、父を簒弑したという状況設定も必要だ。お前には、無理だ」
「そんなもの!王座を簒奪した後の治世でどうとでもなる!」
「皇帝の実子でなければ、皇帝になることはできない。お前は、過去において皇帝だったかもしれないが、今のお前はただの一般人だ」
「なら!佐代子さんのように、仮面をつける!ルルーシュという仮面を!それで不完全というのなら!整形だって!!」
全身全霊の力をこめて叫ぶ僕とは裏腹に、ただただルルーシュの声音は淡々として。
顔を変えることさえいとわない!そう言いきった僕に、ルルーシュは悲しそうだった表情を、泣きそうなそれに、変えた。
この瞬間、この刹那、僕は本能の粋で察していた。
ルルーシュが、これからする行動を。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。ライ、お前はすべてが終わるまで眠っていろ」
それでも僕は、まっすぐに君を見よう。
たとえそのために、僕の真意が曲げられようと。
君が僕に与える言葉なら、僕は逃げずに受け止めよう。
その結果を、だれより知っているけれど。でも、僕は。
君のことが、好きだから―――
ライくんがR2にいたらIF設定。
IF設定にも個人的解釈でいろいろあるのですが、今回はものわかりのいいライくんを。
2009/11/09