俺の願いの為に、捻じ曲げたお前の想い
それでもお前は、俺の気持ちに応えてくれるのだろうか.
意識を失ってくずおれた身体を抱きしめて、ルルーシュはそっとライを床に横たえた。
本当は、ライをこんな所に寝かせたくなどなかったけれど、顔をよくみたかった。その心の命ずるままに、ライを温度のないCの世界に横たえる。
死んだように眠るライの顔は穏やかで、ルルーシュはほっと息を吐いた。言葉には出さなかったが、眠っている間は優しい夢を見ればいいと、そう願ったから。
想いがギアスに反映されないことなど、とっくに知っていたけれど。それでも、ギアスがその願いを受け取ってくれたのではないかと思うほど、ライの寝顔は穏やかだ。
「ライ」
そっと、想いをこめて、至高の宝物のように名前を紡ぐ。
伸ばした指先は、温かな頬に触れて確かな温もりに安堵する。そんな資格、たった今失くしてしまったと、わかっているのに。
「ライ」
二度と答えてくれることのない呼びかけ。次にライが目覚めるのは、すべてが終わった後。ゼロレクイエムが成就したとき。ルルーシュが、死んだ、あと。
再び視線が交わる事は無く、心がぽうと暖かくなる笑みが向けられることもなく、その唇がからルルーシュを呼ぶ声がつむがれることもない。
ゼロレクイエムを考えたその瞬間から、ライが反対することは予想出来ていて、ライの言葉すら、わかっていた。それでもゼロレクイエムの決意は鈍らなかった。だから、覚悟していた。この時を。
ああ、それでも。
こぼれそうになるのは、何のための涙か。悲しみか、後悔か……愛しさゆえか。きっと、全てを内包したものだ。
つぅ、と紅い鳥の羽ばたく瞳から、一筋だけ、涙を落とす。
世界のための、この命。この瞬間だけは、愛する人のために。
「愛して、いる」
今も、未来も、死んだその後も。
永久の、愛を、君に―――
そっと口づけた唇は、酷く切ない味がした。
ルルーシュは“愛してる”
ライくんは“好き”
相手を想う想いは同じほど重いけれど、言葉にすると少しだけ違う二人の関係
2009/11/09