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その指先から(気まぐれに10のお題)




ルルーシュと二人で、すでに習慣となっている寝る前のチェスをした。今のところの戦績は十一勝十敗。ルルーシュの勝ち越しだ。
意外と負けず嫌いのルルーシュだから、最初僕に負けたときは、壮絶な戦いに満足そうにしつつも後で棋譜を並べて何が敗因に繋がったのか必死に検討していたのだろう。僕がそれに気づいたのは、ルルーシュと二桁に上る対戦をした頃だった。
僕だって、負けたのは悔しかったから棋譜を並べての検討はもちろんしたけれど、ルルーシュとはそのときの迫力が違うと思う。僕との棋譜を並べるルルーシュは、こう、なんていうか、正直に言うなら真剣すぎて怖かった。
とまぁ、そんな諸々は置いておくとして今回はルルーシュが勝った対戦。向かいにいるルルーシュは酷く満足そうで、僕は負けた悔しさを感じつつも、最後まで拮抗し行方の分からなかった戦いにとても満足していた。拮抗していただけ、逆転できる可能性も僅かながらあっただけに、悔しさもひとしお、逆転を許さなかったルルーシュへの尊敬もひとしおだったけれど。

「なぁ、ライ」
「ん?検討か?」
「いや、そうではなく」

負けた要因は何だったのだろうかと、白と黒の乱立するボードの上を真剣に見ていると、ルルーシュの声が聞こえて僕は顔を上げる。なにやら難しそうな顔をしているルルーシュは言いあぐねているのか、口元に掌を当てて視線を僕からずらしていた。
だが、ややあって決心がついたのか真っ直ぐなアメジストの瞳で僕を見つめるとおもむろに口を開いた。

「お前、俺のどこが好きなんだ?」
「?」
「ライ、お前ほどのやつなら、相手などそれこそより取り見取りだろう」

チェス関係の話題が来るものとばかり思っていたので、脈絡のない話題にきょとり、と目を瞬く。少し首をかしげていると、細くするようにルルーシュが付け足して、それで僕は「ああ」と納得した。
眉を寄せて難しい顔をしているルルーシュにとって、それはすごく疑問なのだろう。僕がそう分かるのは、僕自身、ルルーシュは僕のどこが好きなのだろうと付き合いだした当初はものすごく不思議で悩む毎日だったからだ。結局僕はその疑問をルルーシュにぶつけることはなかったけれど(ぶつける前に悩んでいるのをミレイさんに見抜かれて、相談したら笑い飛ばされたからだ「ルルーシュは貴方にぞっこんなんだから、そんなこと気にしないの!」と)ストレートに聞いてきたルルーシュに、ふわりと淡い笑みを浮かべた。

「僕は、ルルーシュの全てが好きだよ?」
「……具体的には?」

僕の言葉に僅かながら頬を赤くしたルルーシュに、笑みを深くする。一度瞳を閉じて、開いたときには笑みの中真剣さを孕ませて、僕は思いつく限りのルルーシュの好きなところをあげていった。

「性格でいうのなら、他人には厳しいのに一度懐に入れた人間にはとことんまで甘いところとか。すごく妹思いのところとか。嫌がっててもなんだかんだで押し負けたり、みんなが楽しそうだと「仕方ない」とかいって妥協してしまうところとか。……僕に、とても優しいところとか」

ルルーシュの僕に向ける笑みは、ナナリーに向けるものとはちょっと種類が違う。気づいたのは、付き合いだした後だけれど、それを佐代子さんにいったら「あら、いまさらですか?」と笑われてしまった。端からは丸分かりだったようだ。気恥ずかしかったけど、胸を締めた温かい感情は今もまだ鮮明に残っている。
思い出して、少し照れてしまって、照れ隠しに笑みを零す。目の前でルルーシュはいつの間にか視線を完全に僕から外してうつむいてしまっていた。けれど、それを怒るつもりはない。むしろ、漆黒の髪から覗く耳が、赤くなっていて微笑ましかった。

「外見面なら、宝石のようにきらきらしたアメジストの瞳も大好きだし、黒曜石のような髪も好きだ。光に当たって、反射して少し紫の色を帯びるところも、すごく好き。あと、声も好きだな。深みがあって、落ち着いて、聞いていてとても安心する。他には―」
「もっ、もういいっ!」

つらつらといい連ねる僕に、先に羞恥心に負けたのはルルーシュだった。僕は、本当に思っていることを口に出すだけだったから全然恥ずかしくなんかなかったのだが、やっぱり聞いている方は恥ずかしいらしい。僕だって、ルルーシュから同じことを言われれば真っ赤になるだろうし。
対戦中の先ほどまでの余裕はどこへやら、僕を止めるルルーシュの声は上ずっていて、口元を押さえているのとは反対、僕を制止するために無意識にかこちらに伸ばされた左手は少し震えていた。そこまで恥ずかしがらなくてもいいのに、そんなことを考えながら、僕はその手をそっととった。

「あとね、僕に触れるその指先から伝わる体温が、たまらなく好きだ」

身を乗り出して、ルルーシュの指先にちゅ、と口付ければ髪の隙間から僅かに見えるルルーシュの頬はますます赤くなった。




お題完遂!
お題を達成したのは、実は初めてです。今までは5題でも3つめで根をあげていたので。
一日一更新のペースを崩さず更新できたのもすごく嬉しいです♪
パラレルばかりの話になるかと思いきや、書き出してみたら意外なことにゲームベース(といっていいのかは迷いますが)の話だけで、びっくりしてます。
でもすごく楽しかったです!真琴さん、お題提供ありがとうございました!!



2009/11/30