Llegara's a comprenderlo.




【アン プレッソ エス ミ アマンテ】の番外のお話になります。
当サイト内比較では、格段に甘いです。
本当はR指定のお話になるはずでした。でも見事に挫折したのでキス止まりだったります。



軽い音を立ててエンターキーを叩いたルルーシュは、一段落着いた原稿がきちんと保存されたのを確認してパソコンの画面から視線を離した。椅子の背もたれに体重を預けて息を吐き出せば、軽くきしんで椅子はルルーシュの体重を受け止めた。
眼鏡をはずして眼精疲労を訴える目元を押さえる。視力を悪くしないよう気をつけてはいるのだが、一度集中しだすとどうにも途中でやめることが出来ないために、目に疲れは溜まる一方だ。
そんなルルーシュのことを心配して、彼女である少女は色々と目に関連する健康グッズをプレゼントしてくれる。ついこの間も、羊の形をしたアイスノンを貰ったばかりだ。彼女に贈らせてばかりいる彼氏と言うのもどうかと思うので、何か貰うたびにルルーシュはお返しをしようとするのだが、律儀と言うか頑固と言うか、彼女はそれを頑として受け取らない。ならば、俺も受け取れないと一度受け取り拒否をしたことがあるのだが、そしたらそれは悲しそうに俯くものだから、慌てたルルーシュのほうが折れたのだ。さてはて、そんな余談はさておき。
これは早速プレゼントを使ってみるいい機会かもしれないと、緩慢な動作で椅子から立ち上がったルルーシュはそこで耳朶を突く物音にようやく気づいた。

(・・・雨、か)

ざぁざぁと、窓を越して聞こえてくるのは結構な勢いを持っているだろう雨音だ。集中すると外界の物音を完全にシャットダウンしてしまうのは、ルルーシュの悪い癖で、今回も遺憾なく発揮されていたらしい。
そういえば、原稿の途中で部屋が暗いと電気をつけたような気がするが、雨のせいだったのだろうか。いや、時間帯も関係しているかもしれない。時計を確認すれば、すでに七時だ。今の季節は夏の終わり。すでに秋といっても差し支えはない。日が暮れるのも随分と早くなっている。雨が加われば、午後五時の時点で薄暗かったに違いない。
そんな思考をしながら、窓際によって外に視線を投じれば、どんよりと重い雲が立ちこめ、雨脚は土砂降りだった。職業柄、あまり外に出る必要がないのでさほど気にしていない天気予報を思い返すが、たまたま今朝みたニュースでは雨とはいっていなかったような気がする。

(通り雨か?)

それとも局所的豪雨だろうか。どちらにしろ天気予報が外れたことには違いない。ならば。

「・・・ライ、は大丈夫だろうか」

様々な経緯を経て、恋仲となった少女。一時期は共に暮らしていたが、現在は別々に暮らしている。それが本来の正しい形とはいえ彼女がこの家を出て行って数日は、ものすごい虚無感と寂寞感がルルーシュに付きまとった。朝起きたとき、晩御飯を食べるとき、寝るまでのささやかな時間、それまで傍にいた温もりがないというだけで、ぽっかりと胸に空いた穴は大きかった。最近では、随分と慣れたけれど。と、それはともかく。
ライの通う高校は、比較的この家からは近いものの、今彼女が住んでいる家からは結構距離がある。
この雨の中帰るのは、かなり大変だろう。それに、天気予報が外れたと言うことは傘を持っていない可能性が高い。一緒に暮らしていた時期があったから、朝チェックする番組は同じだと断言できる。
もう一度時計に視線を向ければ、針は七時五分を差していた。なにか用事があれば学校に残っているかもしれない。

「もう少し早く気づけば・・・!」

ちっと舌打ちをして、携帯を手に取る。着信と新着のメールがないのを確かめ、一瞬だけ電話とメールのどちらにするか迷う。だが、すぐに短縮ダイヤルを押した。ライの性格上、学校で帰れずに困っていたとしても、ルルーシュがメールで確認すれば遠慮からうまくごまかすと判断したのだ。
その点電話ならば、ライの声以外に雑音も拾うのでどこにいるか把握できる。そして、やはりルルーシュの判断は正しかったらしい。二コール目でつながった電話の先ではざぁざぁと、雨音が響いていた。

『ルルーシュ、どうしたんだ?』

聞こえてきた声に無意識のうちに安堵する。ライの声を聞くと落ち着く。そう一度スザク相手に零したら「ほんと、ぞっこんだね」と苦笑されたことがある。

「今どこにいる?学校か?迎えにいく」
『え?・・・その必要は、ないと思う』

ライの問いを無視する形で端的に述べたルルーシュに、ライは電話口で戸惑った声を出した後、やんわりと否定の言葉を口にした。

「傘は持っているのか?この雨だと持っていても濡れるだろう。原稿も一段落したところだ。遠慮するな、迎えにいく」
『あ、いや・・・だから、迎えは本当に必要ないんだ』

戸惑いながら、それでもはっきりと拒否するライにルルーシュが眉間にしわを寄せながらさらに言い募ろうとした瞬間、玄関のインターホンが軽快な音を立てて来客を知らせた。
それにルルーシュが何かを思うより早く、電話口からライの申し訳なさそうな、でもちょっぴり楽しそうな声音が響いた。

『僕、今ルルーシュの部屋の前に居るから』










「ライ!」

ばたばたと珍しく慌てた様子で玄関を開いたルルーシュにライはきょとん、とした顔をしたもののすぐににっこりと笑顔になった。

「久しぶり、ルルーシュ」
「ああ・・・ってそうじゃない!ずぶぬれじゃないか!!風邪を引く、すぐに上がれ!」

笑顔で微笑むライの長い髪の毛は雨に濡れたのだろう、毛先からぽとぽとと水滴を滴らせていて普段は外側に大きく跳ねている前髪も今日ばかりはしっとりと額や頬に張り付いている。高校の制服のブレザーも当然雨に浸食されて濡れきっている。膝上のプリーツスカートに夏場の指定の真っ白なカッターシャツ。季節の変わり目で朝夕は冷え込むからか、上に黒色のカーディガンを着ていてくれたのが幸いだ。でなければ、雨に濡れてカッターシャツは透けていたに違いない。と、それはさておいても、風邪を引くと言うルルーシュの危惧はもっともだ。
だが、ライはルルーシュの言葉を受けてもその場を動こうとしなかった。

「このままだと、部屋が濡れるから」
「そんなことを言っている場合か!」
「でも・・・」

言いよどむライにルルーシュは言い争う時間すら惜しいと、ライの腕をつかむと強引に玄関に招きいれた。
よろけたライを体で受け止めて、玄関を施錠する。もの言いたげなライの視線など綺麗に無視して、すぐに踵を返した。

「玄関が濡れるくらい気にしない!部屋をぬらしたくないなら、そこで待っていろ。すぐにタオルを持ってくる」

ライの頑固さはしっているので、これがルルーシュに出来る最大の譲歩だ。これ以上は、ライが何を言おうが譲れない。ため息を吐きたいのをぐっとこらえて、バスタオルとタオルを一枚ずつ手に取るとすぐにライの元へ取って返した。










「ありがとう」

バスタオルを肩にかけて、残ったタオルで髪の毛を優しく拭いてやる。ふわりと微笑んだライからの謝礼にはちらりと一瞬だけ視線だけを向けて、無言で手を動かす。

「ルルーシュ、怒ってる・・・?」

不安げな声に手は止めぬまま再びライに視線を戻せば、しゅんと肩を落とした様子でバスタオルの端を握っている。自然と、ため息がこぼれた。

「怒ってはいない。呆れているだけだ」
「・・・・・・」
「勘違いをするな。雨の中、濡れて俺の家まで来たことを責めているわけじゃない。むしろ、濡れながら家に帰らず俺の家によったことは嬉しく思うし、評価している」

ルルーシュの表現もおかしいかもしれないが、出会ったばかりのころのライは他人への気遣いはとても上手だったが、一方で自分のことで決して人に迷惑をかけまいとする子だった。以前ならば、学校と家の途中にルルーシュの家があろうが、雨宿りを求めたりせず濡れながらまっすぐ家へと向かっただろう。
だから、ルルーシュの元へよったことを、ルルーシュは頼られている、と嬉しく思うのと同時に、成長なのだと評価している。次は、携帯を使ってルルーシュに迎えを頼めるようになれば満点だ。
頼られるだけではない、頼ることもまた、とても大切なことなのだ。

「・・・うん」
「だから、今度からは変な遠慮はよせ。それに、玄関は今度掃除しようと思ってたからな、丁度いい」

ただ濡れるのと、濡れた雑巾で拭くのは全然別物なので、掃除にはならないのだが。
嘯いたルルーシュに、ライは一度目を瞬くと小さく噴出した。くすくすと肩を震わせて笑うライに目元を和ませたルルーシュは大雑把にだが拭きおわっただろうとタオルをライの頭に乗せると、風呂場へと向かった。

「ルルーシュ?」
「拭いてもそのままだと風邪を引くだろう。それでは元も子もない。風呂を入れるからあったまっていくといい」

怪訝そうなライの呼ぶ声に気軽にこたえて慣れた仕草で風呂の準備をする。湯船にお湯が溜まるのを待っていてはライの体が今以上に冷えるだけだ。お湯は張ってないが、風呂に入れるしかないだろう。暫くすればお湯は溜まるだろうし、濡れた衣類など体温を奪うだけだ。お湯がなくとも浴槽に入っている方がいい。
お湯が浴槽に溜まりだしたのを確認して、ライを呼ぼうと玄関へ戻る。
自分で髪を拭いていたライの姿に、一瞬だけ足を止める。バスタオルに包まれて、濡れた身体は直接は見えないが、頬に張り付いた髪やしっとりと濡れた髪が、なんともいえず色っぽい。同居していたときに、風呂上りのライは何度も見ているのに、最後まで慣れることはなかった。
軽く頭を振って考えを四散させると足を踏み出す。ルルーシュに気づいたらしいライが顔を向けた。

「まだ湯は完全に張ってないが、待っている間に風邪を引くといけないから、風呂に入るといい。湯が溜まるまではシャワーで身体を温めろ」
「うん。・・・あ、でも」
「?なんだ」

素直にこっくり頷いたと思いきや、言葉を濁して困ったように眉根を寄せたライにルルーシュも首を傾げる。その仕草にライが内心「かわいいなぁ」と思っているなど露とも思わず。
それはともかく。

「お風呂を借りれるのは、正直ありがたいんだけど・・・僕は、着替えがない」

少し間をおいたものの、はっきりと告げられた言葉に、今度はルルーシュが言葉に詰まった。そうだった、ライがルルーシュと共にすごしていたのは少し前までの話。ライが出て行くときにライの私物は全て持っていったから、今現在ルルーシュの家にはライの服がない。
思いっきり失念していたことに、頭に手を当てる。濡れた服は洗濯して乾燥させなければ着れないし、かといってその間裸で居るわけには行かない。なら、残る答えはひとつだ。

「・・・・・俺の服を貸すよ。ライがいやでないなら」
「全然嫌じゃないっ。ありがとう、ルルーシュ!」

ぱぁ、っと笑顔になってにこにことお礼を言うライは気づいていない。ルルーシュが返答まで少し時間がかかった、その意味を。










(落ち着け、落ち着け俺!ライにはズボンも渡したし、俺は悲しいが細身の方だ。ライにぴったりかもしれない)

いや、それはありえないし、もしあったらそれはもう凹むわけだが。
リビングのソファに座って悶々としているルルーシュの葛藤は、現在風呂場を使っているライに起因する。
着替えがないライに自分が持っている中で小さい方だと思う服を渡し、風呂場に送り出してからずっと、ルルーシュはソファに座って自分の理性と葛藤を繰り広げていた。
その理由は、実に単純明快。
自分の服を着たライに、動揺しないでいられる自信がないからだった。
実は、以前ルルーシュとライがまだ共に澄んでいた頃、一度スザクの親戚で、ライの母の姉の娘、つまりは従姉妹にあたる皇神楽耶が押しかけてきたことがあるのだが、その際何を思ったのか神楽耶はルルーシュの服をライに着せたのだ。ライは流されるままわけも分からず着ていたようだが、ルルーシュはたまったものじゃなかった。
ルルーシュの室内着、ようはただのTシャツなのだが、それはやはり男女の差と年齢差からライには大きかったらしく(ライが相当細身であることも関係しているだろうが)(ルルーシュもあまり人のことは言えない)だぼだぼだった。袖からのぞくのはちょこんとした指先だけだったし、丈はミニスカートのようだった。下にジーパンをはいていてくれたのが唯一の救いだった。
だが、止めと言って差し支えなかったのが、首元で。神楽耶のチョイスしたTシャツは襟がY字になっていてルルーシュの持つ服にしては珍しく鎖骨まで見えるものだった。それをただでさえサイズの合っていないライがきたものだから、早い話が、胸元が見えていたのだ。
神楽耶は「萌えですわー!」と意味不明のことを叫びながら嬉々としていたが、神楽耶によって強引に見せ付けられたルルーシュは一体何の苦行だと思った。
ただでさえ容姿の整っているライ(ちなみに、そのとき再度思い知ったのだが、細い割りにライは胸がある)のそんな姿を見て、何も思わないほうがおかしい。さらに、ライはルルーシュの恋人だ。恋人の、思いを寄せている相手のそんなある意味あられのない姿に、どんな反応をすればいいというのだ。
本能に忠実になるわけにもいかず、理性を総動員して、なんとか煩悩を押さえ込んで視線を逸らしながら耐え忍んだ。
そんな経験があるので、ルルーシュはいままさに葛藤しているのだった。さらに、あの時は他人である神楽耶がいたから、踏みとどまれたが、今回はライと二人きり。正直、襲わずにいられる自信がなかった。

(いやまて、教訓をいかして、今回はTシャツじゃなく、カッターシャツを渡したんだ。大丈夫だ、問題は全てクリアされている!)

蘇るそのときのライの姿を頭を振ることで幾度も消して、平常心平常心と自身に言い聞かせる。欲望に負けるのは簡単だが、負けたことでライを傷つけることだけはあってはならない。ただでさえ十歳の年の差は大きい。それに相手はまだ高校生。真綿にくるむようにして、愛情を注がなければならない。第一、無理やりだなどということになって、ライに嫌われた日には生きていける自身がない。それほどまでに、ライに入れ込んでいることをルルーシュ自身自覚している。
だから、ライを傷つけるくらいならば、どんな苦行だろうと耐え忍ぶ方が断然ましなのだ。

そんな葛藤を繰り広げていたルルーシュの思考を止めたのは、突如響いた悲鳴だった。

「ライ?!」

風呂場から聞こえた、紛れもない愛しい彼女の悲鳴に、血相を変えてルルーシュは風呂場へ直行した。










「ライ、どうした?!!大丈夫・・・・・・か」

勢いよく扉を開け放って風呂場に入ったルルーシュの視界に飛び込んだのは浴槽にルルーシュの渡したカッターシャツ一枚で座り込んでいるライの姿だった。
胸の辺りまで張られたお湯の中、ライはぱちぱちと瞬きを繰り返して、ルルーシュを見つけるとかぁ、と頬に朱を上らせた。

「あ、あああ、あの!ルルーシュ、これは、その・・・!」

ざばっとお湯の中から手を出して、あわあわと意味もなく振る。恥ずかしさからか、視線をルルーシュから逸らすと、ライは言い募った。

「お風呂借りて!上がって、そこまではよかったんだけどっ。・・・あの、窓を、開け忘れて・・・それで、その、窓、を開けようと思って・・・開けようと、したら、石鹸落としてたみたい、で。みごとに踏んで、すべって、ころんで・・・驚いて悲鳴を・・・!ごめんっ、驚かせたよねっ!」

ごめんなさい!もう一度謝罪するライの前で、無言だったルルーシュは、完全に固まっていた。
石鹸のせいで滑って浴槽に堕ちたのだと言うライは、胸元まで湯船に浸かっている。浸かっていない胸元は、着替えの途中だったのか第二ボタンまで空いていて、胸の谷間がくっきりと見えているし、お湯に使っているほうは、お湯のせいでゆらゆらと浮いている。早い話、見えてしまいそうなのだ。
不意打ちでこんな姿を見せられて、どうして平静でいられるだろう。平静以前に、思考がすっぽりどこかに抜けてしまったルルーシュは凍りついたように固まったまま動けない。視線を逸らす逸らさない以前に、思考がそこまで追いついていないのだ。
反応がないことをいぶかしんだのか、そろそろとライが視線を上げる。ばっちりライの視線とあっても、ルルーシュが動くことはない。不思議そうに首を傾げるライにも反応できなかった。
二人の間に落ちた、奇妙な沈黙を切り裂いたのは、突如音を鳴らしだしたルルーシュの携帯だった。

「ルルーシュ、呼び出し・・・いいの?」

ライの言葉に、ようやくのろのろと視線をポケットに突っ込んだままの携帯に向けるが、中々手は伸びない。やがて、携帯は留守電へとつながった。

『ルルーシュ?僕だよ、スザク。今君の家の前まで来てるんだけど、留守なの?電気ついてるから、いると思ったんだけど・・・。この間借りた小説を返しにきただけだから、留守みたいだし郵便受けに入れていくね。明日にでも確認しておいて』

「ルルーシュ?スザク、そこにいるって。でなくていいの?」

メッセージを録音し終えた携帯が静かになるっても、一向に玄関に向かったりスザクに折り返し電話をかける様子のないルルーシュにライが痺れを切らしたのか、立ち上がった。
ざぶ、と音を立てて浴槽を出て、ルルーシュの横をすり抜けようとする。我に返ったルルーシュが慌ててライの手首をつかんで止めた。

「ライっ。お前、なにしてるんだ!」
「なに、って。スザクが来てるんだから、出ないと。折角雨の中着てくれたのに、このまま返すなんて可愛そうだろう」

これが、他のライの知らない人ならば、どう対応すればいいのか悩んだろうが、相手はスザクだ。ライをルルーシュに押し付けた張本人であり、二人が交際していることを知っている。ライがでていってもさして驚きはしないだろう。
というのが、ライの思考なのだが、ルルーシュは違った。

「その格好で出て行くつもりか!」
「スザクなんだからいいじゃないか」
「お前・・・!自分の格好をよく見てみろ!」

一緒に住んでいたときから思っていたことだが、ライは自信が女であることに酷く無頓着だ。認識していないのではないか、と疑うことがあるほどに。
だから、ライの発言は本人からすれば至極当然で、問題ではないのだ。だが、そう思っているのはライ一人で、ルルーシュやスザク、ひいては世間から見れば冗談ではない。

「みるもなにも、相手はスザクなんだから・・・っ」

言葉を途中で詰まらせたライは、急に圧迫感の強くなった手首に眉を寄せた。痛い、と訴えようとルルーシュと視線を合わせれば、ルルーシュは先ほどまでとは打って変わって酷く落ち着いた、いや、怒りに燃えていっそぞっとするほど冷たい瞳をしていた。

「ルルー」
「ライ、お前俺を男と認識しているか?」
「当然だろう」
「なら、スザクを男と認識しているか?」

ライの言葉をさえぎり、投げかけられた質問。唐突な内容に首を傾げる前に、ルルーシュの静かな、だが確かな怒りの剣幕に押されてこっくりと頷いた。ルルーシュは、男だ。そんなこと、当の昔に知っている。
続くルルーシュの問いかけにも、至極当然とばかりに頷いた。それが、いけなかった。

「ルルーシュもスザクも男だ。それくらい知ってる!いまさらなにを」
「そうか。男だと、わかっているのか。なら、男の前でそんな格好をするのがどういうことか、それも、わかっているんだな」
「なにをいいたいのか――!」

わからない。そう続くはずだった言葉は、口の中に押し込められた。
突如唇に触れた柔らかい感触。目を見開くライの眼前には、ルルーシュの端整な顔がある。閉じられた瞼は長い睫に彩られていて、男であるのに、女性以上に美しい。
驚いたライは咄嗟に距離をとろうとして、後ずさろうとしたが適わなかった。頭はいつの間にかルルーシュの左手が回っていて、腰には右手があり、ライの動きを束縛する。
台詞の途中だったライの唇は中途半端に開いていて、その隙間からルルーシュの舌が進入してきた。ぬるりと温度を持ったものがライの舌を絡めとリ、歯列をなぞり、口内を蹂躙していく。逃げるライの舌を逃がさないとばかりに絡め撮る。深いキスに息が上がる。

「・・・ん・・・ふ」

いつの間にかライの手は縋り付くようにルルーシュの服を握り締めていて、視界一杯にあったルルーシュの顔も消えていた。目を閉じたのだと、気づいたのは暫くしてからだ。
息苦しくて、握った服はそのままにルルーシュの身体を押して抵抗するものの、力の抜けた身体での抵抗はたいしたものではない。いくらルルーシュが一般平均より体力が劣るとはいっても、それでもルルーシュは男で、ライは腕は立つといっても女なのだ。埋めがたい差があるのは、仕方がなくて。こんな場面になってしまえば、なおのこと。

「んん・・・ふ・・・」

角度を変えながら攻め立ててくるルルーシュのキスに翻弄されて、膝はとっくに砕けている。けれど、ルルーシュが座り込むことを許さない。ルルーシュの腕一本で支えられて、ライはかろうじて立っている。
ようやく長いキスから開放されたときには、ライの唇からはどちらのものとも知れない透明の雫がこぼれていた。お互いの間をつなぐ銀糸の糸が切れたのと同時に、ルルーシュの束縛がなくなる。
かくり、と座り込んだライの瞳は潤んでいて、息も荒い。上気した頬は、湯上りのせいかキスのせいなのか判然とせず。
そんなライを冷たい瞳で見下ろしたルルーシュはゆっくりとした動作でライの前に膝をつくと、ぼぅとしているライの耳元に唇を寄せて、うっそりと囁いた。

「お前は、俺もスザクも男だと知っていると言った。ならば、教えてやろう。男が、今のお前を見て、どんな反応をするものなのか」

ライがなにか言葉を発するよりも早く、それだけ囁いたルルーシュはライの腕を引くと立ち上がらせ、すぐさま抱き上げた。深いキスの余韻のせいでぼんやりとしているライを腕の中に、ルルーシュはにこりと微笑んだ。常の彼の笑みからは程遠い、ニヒルな笑みを浮かべて。




相方とえろ語りになったときに、相方がつゆりの要求に応えてR指定のとても素晴らしいルルライにょ、しかも【アン プレッソ エス ミ アマンテ】の設定で小説を書いてくれたものだったので、何かお返しをしなければ!と意気込み、なにがいいのか訊ねたところ「お前もえろ小説書けよv」みたいなリクエストが来て、もらった手前拒否るわけにもいかず、妄想したり読んだりするのは大好きなので、いけるかな…?と一生懸命かいてみたんですが、でぃーぷきすの時点でなんかもう「うわぁぁぁぁあ」ってなって、前振りだけで終わってしまいました…。ていうか、前振りが長過ぎる……。
そして書いた後暫く自己嫌悪に陥りまくったと言う(苦笑)
読むのとかは大好きなんだけどな!自分で書くのはやっぱり違いました。
いつかリベンジを果たしたいと思いつつ、えろで挫折するのはこれで二回目だったりするので、つゆりには一生無理な気がしてきた……。
えろをかける方を心底尊敬します。と、その前に我が家(サイト内)には甘い話すらほっとんどないことに今更気づきました。あれ?おかしいな…。
まずは甘い話を書くところからはじめようと思います。そもそも我が家は友情に偏りすぎなんだ!



2009/11/06